今年の9月横浜のデパートで開かれた展示会にふらりと入って、すっかり魅了された東京友禅染作家、小倉貞右さんの作品。初めてお会いしたというのに小一時間話がはずみ、その作品のモダンさ、華やかさ、それでいて伝統をきっちり踏まえた美しさもさることながらそのお人柄の良さにもほれ込んでしまいました。そんな出会いがあって、3か月、呉服担当者のお誘いで友人と二人工房をお尋ねする機会を得ることができました。着物に詳しい方なら当然ご存知でしょうが、東京友禅の工房の多くは神田川沿いにあります。小倉さんの工房もその近く、高田馬場にあり、横浜からですとちょっとした小旅行気分で訪れることができます。もっとも今は湘南新宿ラインという便利なものが走っているので、時間的にはあっという間ですが・・
工房というとなんだか昔ながらの工場みたいなところを想像して行ったのですが、瀟洒なお宅の一角に作業場が作ってあり、それも畳敷き。友禅台といわれる台で作業するには畳のほうが仕事の効率がよいのだとか。手描きに使う筆や刷毛を見せてもらい青花で描かれた下絵に線描きで挿していくところを実演していただいたのですが、それはそれは軽やかなもの。息を止めて一気に筆を運んで行くようです。
小倉さんから今回東京友禅について学んだこと
①私は東京友禅というと地味で藍と白、茶を主に使った定番のものしか浮かばなかったのですが、今は作家がそれぞれの個性を生かして製作しており、多種多様だとのこと。東京で作られているから東京友禅だというくくりが一番あたっているかも・・・
②小倉染芸ではゴム糸目糊を主に使っています。それには理由があって昔からの糸目糊だとゴム糸目糊とは工程が違ってきて、地染めが後になる。小倉さんの場合とくに地色にこだわるので、先に地染めをするゴム糸目糊のほうが模様挿しの色とのバランスを見る上で効率よく行く。ただし、既製品のゴム糊だとどうしても平面的になるので、工房独自の配合の糊を作っているとのこと。
③手描きをするための刷毛はなんでもよいというわけにはいかない。その専門の職人さんが辞めてしまい、数年分の買い置きはあるが、今後どうするかが問題だとのこと。東京友禅は一人の模様師が作品を作っていくというイメージがあるが、やはりいろいろな専門分野の職人さんとのコラボレートなので、一角が崩れると大変なことになる。
おいしいお食事をご馳走になり、奥さまのおいしいお茶を頂き、念願の桜ねず地の楊柳の単衣を特注して15時ごろ工房を後にしました。ただしこの着物地が染め上がるのは来年の9月。楽しみはゆっくりと味わうほうが人生は豊かになるかもしれませんね。

今日の着物: 紅花紬(新田秀次作) 帯:南風原花織(大城哲作)と南北の競演となりました。